楽しみ、楽しませ、ほんのちょっと楽になる

Vol.08本道佳子マネージャー日記

Vol.08本道佳子マネージャー日記 本道さんの引き算。

2015.02.12

この連載を、読んでくださっている方から、本道さんの活動や今までのことをもっと知りたいというお声をいただきました。
 
本当に様々なことをしている方なので1回では紹介しきれないうえに、一つひとつの動きにエピソードが満載なので、まずはとても短く概要だけを紹介させていただくと・・・・・・。
 

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高校を卒業し、会社に数年勤めた後に単身渡米。ニューヨークにて世界各国の料理を学ぶ。
様々な出会いを経て、NYの一流レストランのスーシェフとして世界のVIPに料理をふるまう。
 
5年後にロサンゼルスへ移住。ケータリングをしながらオーガニックやマクロビに触れる。
 
10年間のアメリカ生活を終え、日本へ帰国。
長野へ移住し、畑の人たちと協力してメニュー開発をするなど、地域活性化の活動をする。
(馬や羊と暮らしていたこともあるとの噂も!)
 
東京へ戻り、来日する海外のダンスチームや映画制作チームのツアーシェフを担当。
病院とコラボレーションして「最後の晩餐会」や「お薬なるご飯の会」でシェフをする。
 
2010年末から2014年6月まで、東京・湯島でヴィーガンレストラン『湯島食堂』をオープン。
2014年の夏からは活動の場を世界に広げ、日本・世界の各地で「愛あるご飯」をお届け中。


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だいぶ簡潔にしてありますが、大きな流れはこんな感じでしょうか。
 
そして現在は、というと。
熊本や岐阜の病院とコラボしたお食事会は定期的に続けていますし、国内外問わず、お食事会にお話会、お料理教室やケータリングをしながら時々雑誌のレシピ作りや撮影もしています。
 
以前からお話しているように、本道さんは肉・魚、卵・乳製品を使わない、いわゆるヴィーガン料理のシェフ。
でも、ニューヨークのレストランにいた頃は、高級食材や滅多に手に入らない珍味など、世界中のあらゆる食材を使ってお客様からリクエストされた物を作るというスタイルのシェフでした。
 
だから本当は、どんな物だって作れるのです。
 
じゃあ、なぜヴィーガン料理のシェフになったかというと。
ロサンゼルスへ移住したのが最初のきっかけ。
 
そこで野菜しか食べていない社長さんや、クリエイターさんにたくさん会い、その方たちの波動の軽さに驚いたのだそうです。
 
野菜だけを食べていると、頭や身体がスッキリしてクリエイティブな発想がどんどん湧いてくる。そういう人たちの様子を見聞きして、野菜が持つパワーの大きさを強く感じました。
 
もちろん、お肉を食べることで得られる力強さみたいなものもあるので、必ずしも野菜だけが良いということではないですし、本道さん自身も野菜しか食べないわけではありません。
 
ただ、そうしたロスでの発見とともに、「野菜だけなら、国も宗教も関係なく、誰もが同じ食卓を囲むことができる」という想い、さらには、日本で誠実に愛情を込めて野菜をつくる農家の方々、そして、その方たちが作る美味しい野菜との出会いなどが加わって「野菜だけを使った料理をつくっていこう」と決めたそうです。
 
こうして、日本で昔から食べられている野菜料理に、アボカドやナッツやオリーブオイルなど加えて、世界の人も食べやすくなるような独自のエッセンスを付け足すことで、現在の本道さん流ヴィーガン料理がつくられるようになりました。
 
この一連の流れを聞いていると、私は思うのです。
 
本道さんのお料理は、まるで魔法を使っているかのように突き抜けた感性と才能でつくられる。
それは紛れもない事実であるけれど、その魔法が使えるバックグラウンドには、地道に積み上げた基礎があるのだということを。
 
経験をひとつずつ足し合わせ、積み上げて、何でもつくれるようになったベースがあるからこそ、そこから上手に引き算をして、不要なものは極力減らし必要なものを最大限に活かすという方法で料理ができる。
それが今、シンプルで大胆、かつ独創的なスタイルの料理へと繋がっているのだと思うのです。
 
そういえば本道さんが言っていました。
「みんな、料理の味を良くしたいって思うとすぐに『何を足せばいいのか』って考えちゃうんです。
でも本当は、いかに『引く』かってことも大切だと思うんですよ。」
 
おそらく、ここで言う『引く』というのが、「この料理をつくるには、これとこれが必要だ」という固定概念を外した上手な引き算のこと。
そうすると「これがないから、この料理ができない」という発想が消え、「これの代わりになるもの」を探したり、「これがなくても美味しくなる方法」を考え始める。それが食材の味を『引き』立てることにもつながる。
 
こうした上手な引き算が、予想もつかない組み合わせを生み出したり、思いがけない新しい味の発見となり、本道さんスタイルができあがっている気がするのです。
 
私も上手な引き算ができるようになる為に、毎日の小さな小さな積み重ねを大切にしていこう。そう思う今日この頃です。

 
PH_amano_v08_1-20150212UP.jpg紫さつまいもに、小カブと豆乳ソースをのせてピンクペッパーをふりかけた料理。シンプルながら斬新です
 

PH_amano_v08_2-20150212UP.jpg真っ赤なビーツに緑の菜っ葉と、たくあんをのせた料理。目にも楽しいダイナミックさ

Writer Profile

天野麻里江
天野麻里江Marie Amano

本道佳子さんマネージャー
大学卒業後、システムエンジニアとしてIT企業に入社。法務部で契約書作成にも携わる。2011年3月、本道さんと出会って価値観が大きく変わる。2013年夏に退社。本道さんマネージャーと国境なき料理団事務局を担当し、皆様に本道さんの魅力を届けるべく活動中。
小さい頃から食べることが大好きで「おいしい食べ物は人を笑顔にする」と信じている。

本道佳子(ほんどう・よしこ)
NPO法人・国境なき料理団 代表理事。高校卒業後、単身で渡ったアメリカで世界中の料理に触れる。帰国後は野菜料理のシェフとなり、『食で世界が平和になったら』の想いを胸に、病院とのコラボ「最後の晩餐」など様々な活動を続ける。その人柄と大胆でカラフルな野菜料理は評判となり、2014年「湯島食堂」閉店後も、世界の各地で愛あるご飯をお届け中。

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