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Vol.09本道佳子マネージャー日記

Vol.09本道佳子マネージャー日記 バトンが繋がれた

2015.02.19

4日前の2月15日、「高校生が主催するお料理教室」が神戸で開催されました。
今回は、それにまつわるお話をひとつ。
 
本道さんが、最近特に力を入れようとしていることのひとつに「教育」があります。
自分の想いを大人の皆さんだけでなく、若い世代の人たちに繋いでいくこと。その重要性を強く感じているのです。
 
本道さんの信条とも言える「食で世界が平和になったら・・・」の想い。
 
このベースにあるのは、「今の子どもたち、そしてこれから生まれてくる子どもたちに、この地球を今よりほんの少しでも良い状態で渡したい」という気持ち。
 
とてもシンプルではあるけれど、ものすごく大切なメッセージだと私は思っています。
 
地球の長い歴史において、どの時代が一番よかったかなんて、わかる術はないし、きっとわかる必要もない。
ただ、自分が生きている今この時代より、ほんの少しだけでもいい地球にする。
 
これだけは、過去のどんな素晴らしい先人にも、未来に現れるどんな天才にもできないことであり、唯一「今」を生きる私たちだからこそできることです。
 
とは言っても、多分そんなに仰々しいことではありません。
おうちの庭をキレイにするとか、落ちていたゴミを拾うとか。目の前のお花を踏みつぶさないとか、大切な人に「ありがとう」と言ってみるとか。
 
そんなふうに自分ができる方法で、今、目の前にいる人や物事を、たった0.1mmでも良い状態にしようと意識をしてみる。
それをひとつずつ重ねていくことが、今よりほんの少しだけいい地球へと繋がるのだと思うのです。
 
そうした中で、本道さんが選んだ方法は「料理」。
 
私たちのカラダは食べたものでできている。すなわち、今食べるものがそのまま私たちの未来を創る。
だからこそ、今この瞬間に口にするものがとても大切であるということ。
 
お家でお母さんが、あなたのためにつくってくれたご飯や、あなたが家族や自分自身のためにつくるご飯。
それが何よりも優しく尊いものであること。
 
そうして家の食卓に小さな光を灯すことが世界の平和へと繋がっていくこと。
 
本道さんは料理にこういう想いを込めることで、食べてくれた人にバトンを渡し、その想いを繋ぎ紡ぐことによって、今よりほんの少しいい地球にしようとしてきたのだと思います。
 
さらにこれからは、そのバトンを大人だけでなく子どもにも繋ぎながら、縦にも横にも広げて大きな円をつくろうとしているのかもしれません。その円が、いくつも重なればそれは球になりますもんね。
 
 
今回神戸でおこなった料理教室は、高校の保健室の先生からいただいたお話がきっかけでした。
 
この先生が本道さんのお料理本を保健室に置いていたところ、一人の生徒が、いつも保健室でその本を読んでいたそうです。
「もしこの生徒が本道さんに会えたら・・・・・・」という、先生の温かな気持ちが発端となり、その生徒がお料理教室を主催して、そこに本道さんが講師として招かれることとなりました。
 
参加してくださったのは、9才の小学生から大人までの30名。
 
子どもでもつくりやすいようにと選んだシンプルなメニュー3品をつくった後は、本道さん自身がとても楽しみにしていたお話タイム。
 
本道さんは、「人生にはやるかやらないか、そのどちらかしかない」こと、「やりたいことをはっきりと口に出すことで、自分のストーリーは必ず展開していく」ことを、ご自身の経験を交えながら話をしました。
 
すべての問いかけに「Yes」と答えて道を拓いてきた本道さんだからこそ、その言葉は子どもだけでなく、大人にもストレートに突き刺さります。
 
高校生を中心とした若い世代の人たちは、言葉少なで少し控えめ。
でも、目をキラキラと輝かせながら、本道さんが料理をつくる様子や料理そのもの、そして本道さんの言葉を心の真ん中でしっかりと受け止めている姿が印象的でした。
 
大人の方々も、今の自分を見つめたり、高校生の頃を振り返ったりしながら、同じようにまっすぐな目で未来を見据えているのを感じました。
 
一人の生徒の小さな光を見逃すことなく大きな光へと変えた先生、その想いを受けて、自分の確固たる信念をまっすぐに伝えた本道さん、それを聞いた若い人たちの希望に満ちた眼差し、その様子を見守り、自分の人生にも再度光を灯す大人の参加者。
 
そこには間違いなく、ひとつの大きな流れがありました。
 
その様子を見ていて気が付いたのです。
バトンを渡すというのは、同時にバトンを受け取ることなのだと。
 
自分が未来へ向けて繋いだバトンは、大きな希望の光を灯して、自分のもとへ返ってくるのです。
 
私は今回、とても大切な場面の目撃者になった気分でした。
一人の目撃者として、自分が見たこと・感じたことを伝えることが、今の私にできるバトンの繋ぎかたなのだと思い、ここに記しておきました。


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お料理教室でつくった一品。イタリアのお母さんがよくつくるというブロッコリーのパスタ。材料はシンプル、つくりかたも簡単なのに絶品でした


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お料理教室のために準備した野菜たち。その堂々とした姿は、調理されるのを待ち構えているようです

Writer Profile

天野麻里江
天野麻里江Marie Amano

本道佳子さんマネージャー
大学卒業後、システムエンジニアとしてIT企業に入社。法務部で契約書作成にも携わる。2011年3月、本道さんと出会って価値観が大きく変わる。2013年夏に退社。本道さんマネージャーと国境なき料理団事務局を担当し、皆様に本道さんの魅力を届けるべく活動中。
小さい頃から食べることが大好きで「おいしい食べ物は人を笑顔にする」と信じている。

本道佳子(ほんどう・よしこ)
NPO法人・国境なき料理団 代表理事。高校卒業後、単身で渡ったアメリカで世界中の料理に触れる。帰国後は野菜料理のシェフとなり、『食で世界が平和になったら』の想いを胸に、病院とのコラボ「最後の晩餐」など様々な活動を続ける。その人柄と大胆でカラフルな野菜料理は評判となり、2014年「湯島食堂」閉店後も、世界の各地で愛あるご飯をお届け中。

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