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Vol 13. ありのまま、ブータン

Vol 13. ありのまま、ブータン アプ・ボクトと樽の物語⑨:
最終回

2016.05.14

みなさん、こんにちは。
すっかり4か月間もの間、更新が滞ってしまい、ごめんなさい。
気を取り直して、今月から連載を再開したいと思いますので、
どうぞ、よろしくお付き合いください。
 

久々の更新でお伝えするブータン、やはり一番のニュースは、王子のご誕生です。
昨年11月、王妃ご懐妊のニュースをお伝えしましたが、
今年2016年2月5日、無事に男の赤ちゃんをご出産され、また国中が喜びに包まれました。
 
ブータンでは、赤ちゃんの名前は僧院にてお坊さんにつけてもらうのが一般的。
新生の王子さまも同様に、プナカ・ゾンの僧院にて、
シャブドゥン・クチェという神聖な日(4月16日)に、命名式が執り行われました。

命名式の様子は、こちら、国王陛下のFacebookページに、
盛りだくさんの画像と共に紹介されています。

今年は、ブータンを統一した高僧、シャブドゥン・ンガワン・ナムゲルの、
ブータン到来400周年という非常におめでたい節目の年でもあります。

ブータンで最も権威のある大僧正、ジェ・ケンポは、王子を、
『ジグミ・ナムゲル・ワンチュク(Jigme Namgyel Wangchuck)』と命名しました。

『ジグミ(Jigme)』は、“勇敢さ”を意味し、
これからブータン王国が直面しうるあらゆる困難に、恐れなく立ち向かうことの象徴。
『ナムゲル(Namgyel)』は、“勝利”を意味し、あらゆる方面における勝利の象徴。
また、ブータンを統一した、シャブドゥン・ンガワン・ナムゲルの名から取られました。
『ワンチュク(Wangchuck)』は、ワンチュク王朝の名称です。
 
現代5代国王陛下のお名前が、
『ジグミ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク(Jigme Khesar Namgyel Wangchuck)』ですから、
“ケサル”以外は同じお名前、ということになります。
ブータンでは、皆さんがこのようにお坊さんから名を授かるので、
タシさん、ティンレーさん、ソナムさん、ツェリンさん、
プンツォさん、テンジンさん、チョキさん、デキさん、ワングモさん・・・・・・などなど、
同じ名前の方がたくさんいらっしゃるのですが、
ブータン皇室もまた同じで、なんだかほっこりしてしまいますね。

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こちらの写真は、3月6日、王子の誕生を記念して、ブータン国中で同時開催された、
植林大会の様子です。お祝いに植林、というのがまた、
自然環境を大事にするブータンらしい、素敵な取り組みですよね。

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私もこの日は、ティンプーの植林大会に参加させてもらいました。
携帯番号を書いたのは、万が一、誰かが通りかかったときにこの木が枯れていた場合、
「あなたの植えた木が枯れかかっているから、水をあげたほうがいいですよ。」と、
教えてもらうためだそうです。
みんなが家族のように助け合って生きる、ブータンらしさが、
こんな些細なことからも感じられますね。
 

さて、前置きが長くなりましたが、アプ・ボクトの冒険の物語、ようやく最終回までたどり着きました!
 
 
アプ・ボクトと樽の物語⑨:最終回
 
アプ・ボクトを逃がしてしまったことで、他の動物たちから責められ、絶体絶命の白猿。
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と、思ったら、今度は白猿の座っている地面が大きく揺れ始めたではないですか。
「わぁ!今日はなんて悪いことが立て続けに起こる日なんだ。
これ以上悪いことが起きる前に、逃げた方がいいぞ!」
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地面が大きく揺れたのは、地震でも神秘の力でもなく、
地中のアプ・ボクトが体を大きく揺らしていたから。
「動物たちは、きっと怖がって逃げてしまうに違いない!」
アプ・ボクトは、渾身の力を振り絞り、さらに大きく大きく、頭上の石を揺らしました。
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アプ・ボクトの作戦は大成功!
地面が大きく揺れ、怖がった動物たちは、散り散りに逃げていったのでした。
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作戦が成功したアプ・ボクトは、ほっと肩をなでおろすと同時に、大喜び。
笑みが止まりません!
「しょせん、ばかな動物たちだったな! 賢いおいらを簡単に捕まえられると思ったら、大間違いだぜい!」
アプ・ボクトは喜び勇んで、力の限り脚を動かし、家族の待つ家へと駆けて行ったのでした。
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家では、家族が首を長くして、アプ・ボクトの帰りを待っていました。
「お父さん!心配したんだよ!無事に帰ってきてくれて、本当に嬉しい!」
と、大喜びの娘。
 
「ごめんな。お父さんは、何も持って帰ってこられなかったけれど、
大変な困難を乗り越えて、命からがら帰ってきたんだ。どうか、許しておくれよ。」
と、アプ・ボクト。
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「お父さん、もう僕は食事に関して文句を言ったりしないよ!」と、息子。
「あら、あなたも成長したのね。じゃあ、これからは毎日おかゆを作りますからね。」
と、お母さん。
「え?、やっぱり、おかゆかぁ?。」
と顔をしかめる息子に、家族みんなが大笑い。
アプ・ボクトの家に、いつもの明るい笑い声が戻ってきたのでした。
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めでたし、めでたし。

















Writer Profile

松尾 茜
松尾 茜Akane Matsuo

日本の大手旅行会社に5年間勤務した後、2012年よりブータン王国の首都ティンプー在住。ブータンの持続可能な観光開発事業に携わっている。地域固有の自然や文化、昔ながらの人々の生活を守りながら、ゆるやかに交流人口を増やし、地域経済を、訪れた人の心身を、着実に豊かにしていくような観光を、世界各地で促進していくことがライフワーク。

Ap Bokto
Ap Boktoアプ・ボクト

ブータン王国の田舎町出身。二児の熱血お父さん。農家で、家族と家畜と共に、昔ながらの伝統的な生活を営んでいる。敬虔な仏教徒でもある。

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