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ケイ子のマドヒ、エガキ、ワラヒ、ススム Vol.06

ケイ子のマドヒ、エガキ、ワラヒ、ススム Vol.06

2015.07.28

[マドヒ]の話 02
 
 
山梨に、ドライブに行ってきました。
フルーツ公園に行きました。
 
その日は「桃まつり」という、来場者に桃が配られたり
蛇口から桃ジュースが出たりする祭りがあるそうだ。
 
夏休み初日だし、人々がごった返すぞと
ドキドキしながら入ると、人はあんまりいなかった。
 
でも、遠くから松田聖子の「瑠璃色の地球」が・・・・・・。
本人!と思ってかけていくと、地元のおばさん達が新体操の棍棒で踊っていた。
 
蛇口ジュースのコーナーでは、案内する役所のお兄さんがしどろもどろだった。
ヨーヨーコーナーでは、おじさんが
「3個までね。貸してごらん」と、手でヨーヨーのゴムを釣り針にかけて
「さあ、引っ張って」
ものすごいズルで二個もとれた。
 
小腹がへったので、大きいドームの中にあるカフェへ。
カフェといっても、スーパーのフードコーナーみたいな場所。
店員は、みなおばさん。
 
手前にある、さっきおばさんがこん棒で踊ってたステージでは、
恐らくこの祭で一番のビッグゲスト、
地元のものまねタレントが、松山千春を歌っていた。
 
その前には、地元で結成されたアイドルグループ(ほとんど小学生)に、
おじさんカメラ小僧が、たむろしていたらしい。
 
というわけで、桃まつりは想像とだいぶちがったけど、
わたしは田舎で育ったものだから、またセンサーがちがうかもだけど
ダサいのだって、はずかしいのだって
みんなひっくるめて、ほっこりしたのだった。
それと同時に、この人たちの暮らしに、いつもちょっぴり憧れてしまうのだった。
 
午後3時、ショーが終わり、とてつもなくぼんやりした空気が漂う中、
スピーカーからアカペラで、オペラの歌声が聴こえてきた。
モーツァルトの「魔笛」的なやつ。
これ。
 
https://www.youtube.com/watch?v=9Rcg2GZ3Jt8&&undefined;&&undefined;undefined&undefined;&&undefined;&&undefined;undefined&undefined;undefined&&undefined;undefined&undefined;feature=related
 
ものすごい高音。見事な歌声。
でも、舞台をみると…誰もいない・・・・・・。一体、誰が?
 
そのときわたしは、カフェのカウンターの奥にいる
パートの眼鏡のおばさんと目が合った。
 
そして、ピンときた。
 
間違いない。彼女が歌っている…!
 
いっこく堂みたいにすましていて、微動だにしないけど
すましてる感じが、逆にワザとらしい。腹話術っぽさをかもしだしていた。
 
彼女とわたしは、みじろぎもせず、しばらくガンをつけあったが
扉の後ろに隠れながらも、最後まで歌いきった彼女の勝ちだった。
 
まあ、全部、わたしの見た白昼夢かもしれない。
微動だにしなかったのは、本当に何にもしてなかったのかもしれない。
扉の後ろに隠れたのは、わたしがあんまり見るから
恥ずかしくなっただけなのかもしれない。
 
でも、そのときのわたしは、なぜかしら。
今日のわたしを信じてやろうじゃない。そう思ったのだった。
 
素晴らしいもてなしをうけた後に訪れた、ほったらかし温泉では
いい具合にほったらかされて、全体的に、とてもいい休日だった。
 
夏ですネ。

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Writer Profile

五月女ケイ子
五月女ケイ子Sootome Keiko

イラストレーター / エッセイスト / 漫画家
2002年に発売された『新しい単位』(扶桑社)がベストセラーに。その後、さまざまな媒体で独特のインパクトと味わい深いイラストを随時放出中。2010年に娘を出産。妊娠時から3歳までの育児エッセイをまとめた『親バカ本』(マガジンハウス)も話題に。他に、古事記を独自の目線でマンガ化した『五月女ケイ子のレッツ!!古事記』(講談社)や、劇場版も公開されたアニメ『バカ昔ばなし』などがある。LINEのスタンプ『五月女ケイ子のご挨拶スタンプ』も好評発売中。

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