楽しみ、楽しませ、ほんのちょっと楽になる

Vol 12. ありのまま、ブータン

Vol 12. ありのまま、ブータン アプ・ボクトと樽の物語⑧:
絶体絶命

2015.12.12

11月11日、ポプジカ谷で開催された、オグロヅル・フェスティバル。
毎年1回、チベットから越冬のために飛来するオグロヅルを讃えるために地域コミュニティ主体で運営され、今年で17回目を迎えました。
 
ポプジカ谷では、私も駐在しているブータンのNGO、王立自然保護協会(Royal Society for Protection of Nature: RSPN)が、1980年代からオグロヅルの保護活動を推進しており、このオグロヅル・フェスティバルも、RSPN主導で始まりました。
 
現在は、ブータンの中でも唯一、政府に頼らず地域コミュニティが自発的に運営するイベントとして、注目を集めています。
お祭のハイライトは、こちらの“ツル・ダンズ”。
地元の子どもたちが一生懸命踊ります。こちら、今年撮影してきたダンスのビデオを是非ご覧になってみてください。

DSC00462.JPG
 
ツルに扮した子供たちに囲まれ、中央でおどけているのはピエロ役の“アツァラ”。
面白おかしい仕草で、観客を盛り上げます。
“ツル・ダンス”は、正直、大した踊りではないのですが、子どもたちの一生懸命さが伝わってきて、つい笑みがこぼれます。

PH2_arinomama_v12_1-20151210.jpg

地域コミュニティの人々と、訪れた人々が、一体となって、ツルの到来をお祝いする1日。
ダラダラと、自然に流れるように演目が進み、おしゃべりしたり、お茶を飲んだりしながら踊りを鑑賞する、着飾った地元の人々を見ていると、何とも暖かい気持ちになります。
人間社会の本来の形、そして“祭”の原型は、はこんな様子だったのではないかな、と考えさせられます。
 
さて、それではアプ・ボクトの冒険の続きに参りましょう。
 

アプ・ボクトと樽の物語⑧:絶体絶命

 
白猿が樽めがけて投げた石は、見事に命中。
驚いたことに、中には探し求めていたアプ・ボクトが入っているではありませんか!

PH3_arinomama_v12_1-20151210.jpg

「よくも騙したな、アプ・ボクト!おーい、みんな、アプ・ボクトを見つけたぞ!」
白猿は、ここぞとばかりに他の動物たちを集めます
 
PH4_arinomama_v12_1-20151210.jpg

「アプ・ボクトめ!樽の中に入って逃れようとしていたのか!何てずるいんだ!」
熊、白猿、豹、イノシシ、虎は、皆かんかんに怒っています。
「今すぐに食べてやる!」
 
アプ・ボクトは慌てて言います。
「皆を騙したおいらが悪かったよ。でも、よく考えてみておくれ。こんなにたくさんの動物たちにとって、おいら一人は昼飯分にすらならないんじゃないかな。おいらを食べる前に、皆腹ごしらえをしてきた方がいいんじゃない?」
 
それも最もだと納得した動物たち。
熊は虎に、虎は豹に、豹はイノシシに、イノシシは白猿に、アプ・ボクトが逃げないように見張りを言いつけ、それぞれ腹ごしらえに出かけていきました。
 
PH5_arinomama_v12_1-20151210.jpg

「俺様だって、何か食べに行きたいんだ。おい、アプ・ボクト。すぐに戻ってくるからな。ここにじっとしていろ。」
と、白猿は見張り役をすっとぼかし、出かけて行ってしまいました。
 
PH6_arinomama_v12_1-20151210.jpg

動物たちに囲まれ、あまりの恐怖に足がすくんでしまったアプ・ボクト。
とっさに、その場にあったほら穴に隠れることを思いつきます。
すっぽりと穴に入ってしまうと、石で蓋をして、静かに隠れました。
 
PH7_arinomama_v12_1-20151210.jpg

戻ってきた動物たちは、アプ・ボクトが消えてしまったのに気づき、カンカンです。
「おい、白猿!お前が見張り役だろう!なんでアプ・ボクトが居ないんだ!」
「アプ・ボクトには、ここで待っているように言ったのに、あいつが逃げたんだ!」
と言い訳をする白猿。騒ぎ立てる動物たちの下で、ほら穴に隠れたアプ・ボクトは、必死に息をひそめます。
 
PH8_arinomama_v12_1-20151210.jpg

「あのずる賢いアプ・ボクトが、黙って待っている訳が無いだろう! お前は何てバカなんだ、白猿め!」
動物たちは皆で白猿を責め立て、困り果てた白猿は、石の上に座り込んでしまいました。
 
その石の下には、そう、アプ・ボクトがじっと身を隠しています。白猿も、アプ・ボクトも、絶体絶命!食事を楽しみにしていた動物たちは怒り沸騰!さて、彼らはどうなってしまうのでしょうか?
 
つづきは、vol.13をお楽しみに。
いよいよ物語のクライマックスです。

Writer Profile

松尾 茜
松尾 茜Akane Matsuo

日本の大手旅行会社に5年間勤務した後、2012年よりブータン王国の首都ティンプー在住。ブータンの持続可能な観光開発事業に携わっている。地域固有の自然や文化、昔ながらの人々の生活を守りながら、ゆるやかに交流人口を増やし、地域経済を、訪れた人の心身を、着実に豊かにしていくような観光を、世界各地で促進していくことがライフワーク。

Ap Bokto
Ap Boktoアプ・ボクト

ブータン王国の田舎町出身。二児の熱血お父さん。農家で、家族と家畜と共に、昔ながらの伝統的な生活を営んでいる。敬虔な仏教徒でもある。

Back Number

その他のバックナンバー

ページトップ