BS朝日×ハタラク×GINGER 演出家・宮本亜門さんと感じるブータンの旅 幸せの尺度って、なんですか?

Intro

「生きるってどういうことだろう?」「幸せってなんだろう?」
そのヒントがあるのではと、宮本亜門さんとブータンをおとずれました。

10泊 11日のブータンの旅。
その旅はあまりにも新鮮で、あまりにも清々しくて・・・・・・。

今回の旅で、素晴らしい贈り物を、たくさんもらいました。
それらをぜんぶ素直に届けます。
それが、WEBマガジン・ハタラクだからこそ、できることだと思ったので。

全20回のブータンストーリー。
毎週日曜日に更新中。

あなたもブータンをとおして、幸せを、生きることを、感じてください。

カディン チェ ラ(どうもありがとう)!!

Story.10

12月20日 後編

クリーンにリボーン!

12月20日は、ブータンの新年最初の日。その新年を迎えるお祭りを、プムくんの家でも行うということで、『タクツァン僧院』詣での後、再びプムくんの家へお邪魔することとなりました。

お母さんと妹さんが、新年のお祝いのお料理をつくっていました。ジョムジャというお米でできたケーキがそれ。炊いたお米をこね、伸ばし、型に入れて、形を整え、そこにウォールナッツを炒めた大豆油を流し込んで完成。芳ばしい香りと、もちもちした食感。一年に一度のみんなが楽しみにしているご馳走です。

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プムくんが手に持つのは、人を象ったお供え。この人形に一年間溜まった汚れや悪いものを込めて燃やすのが、ブータンの新年のお祭りの儀式です。このようにプムくん一家、みんなで新年のご馳走を準備する姿は、どこか誇らしくも感じられて。

そんなお祭りの準備の合間に、プムくんのお母さんが言いました。「健康でいられて、新年を迎えられて、こうして生きていられることが幸せです」。妹のデマさんも「お兄ちゃんが優しくて、家族も仲良くて、一緒に過ごせる。だから幸せです」と。

そんな家族の姿を見て、亜門さんは感じました。

「お母さんが心から『幸せだ』と言い、どんなに些細なことも、とても楽しそうにやっている。もっとこうしたい、もっとこうだといいという欲が見受けられないのが不思議なぐらい。生きていることが幸せだと、本心で言っているんだろうな。

正直、裕福というよりブータンのなかでも、ギリギリの状況の家庭なのに、これが言えるのは、”今”こうして生きているということを、大きくとらえているからかもしれない。つらいことも何もかも、全部をひっくるめてね。
決して欲で生きているわけではなく、自分が変われば、今、どれだけ幸せかを感じることができるかと。幸せを大きな意味でとらえているのでは。

東京で生活していて、『あなたは幸せ?』と聞いて、すぐに『幸せです』って答える人は、ほとんどいないでしょ。『あれが足りない』、『こうだったらいいのに』と、物質社会では、裕福度が金で計られて、誰もがもっともっとなくてはと、欲求が強くなる。

このブータンでのプムくん一家の生活は、東京で生まれた僕から見ると辛い生活に見える。でもそれは“貧しいから幸せではない”という、先進国で生活している人間の物差しで計っていたのかもしれない。
ブータンの人たちの“幸せ”って、人と比べるものではなくて、その人の本心と、本質的なものなんだね」

幸せについて、ブータンの人々をとおして、亜門さんのなかで、だんだんと調ってきたようです。

そして日が暮れはじめたとき、家の外から爆竹のような音と、「ヒュー、ヒュー」という歓声が聞こえてきました。これが新年のお祭りの合図。

各々の家の近くで火を起こし、そこに人を象ったお供えを燃やし、この一年間の悪いものを祓い、これから迎える一年、悪いものが入ってこないように祈る。亜門さんも一緒に新年のお祭りに参加しました。

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「自分の持っていた悪いものを一気に祓い、一回クリーンにしてリボーンする。新年に生まれ変わるんだ。
この考え方は去る年を葬り、新たな年のために祈る。筋が通っている。だって、お賽銭を払って、願い事をして、ヨロシクだけじゃ、ちょっとね(笑)。

僕はこういうお祓いが大好きだ! ハッピーお祓い! 僕も悪いものを全部祓い、新たなスタートを祝福する。
良い時期にブータンに来れて良かった」と、感激しきりの亜門さん!

A happy new year!!

カディン チェ ラ!

ハタラクは見た!!

最高のおもてなし『ドツォ』

少年僧のプムくんの家で、亜門さんへのおもてなして、ブータンの代表的文化のひとつ『石風呂(ドツォ)』を、準備してくれました。

火で熱々に温められた石を、湯船のなかで割れるのを防ぐため一旦水で冷やし、水がたっぷり入った浴槽へ。この石を多く入れれば入れるほどお湯が温まる仕組みです。

プムくんの家でも、毎日入るわけではなく、特別な日に準備をするという石風呂。ブータンの人たちの、とっておきのおもてなしです。

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亜門さんも、石風呂のお手伝い。自然のど真ん中で入るお風呂は格別。体の芯まで温まります。

宮本亜門

宮本亜門AMON MIYAMOTO

演出家
1958年1月4日生まれ 東京都出身
ミュージカル、ストレートプレイ、オペラ、歌舞伎等、ジャンルを越える演出家として国内外で幅広い作品を手がけている。
http://amon-miyamoto.com/jp/

BS朝日×ハタラク×GINGER 演出家・宮本亜門さんと感じるブータンの旅 幸せの尺度って、なんですか? の目次

Story01 12月15日
出発。じらされてブータン。
Story02 12月16日
なぜかバンコク!?そしてなぜ、ブータン?
Story03 12月17日 前編
ブータンの地に一歩。
Story04 12月17日 後編
生かされている感覚。
Story05 12月18日 前編
大きなビジョンのなかの、今の一瞬。
Story06 12月18日 後編
なにが幸せかは、まだわからない。
Story07 番外編
亜門さん、死って怖いですか?
Story08 12月19日
宇宙と向き合える場所。
Story09 12月20日 前編
魂が宿る場所。
Story10 12月20日 後編
クリーンにリボーン!
Story11 番外編
亜門さん、今のブータンについて話しませんか?
Story12 12月21日
生きてることが幸せ。
Story13 12月22日
お釈迦様も自分も自問自答。
Story14 12月23日 前編
焦らず、一緒に幸せの国にしていこう。
Story15 12月23日 後編
変わらずにある、大切な何か。
Story16 番外編
亜門さん、今は死をどう感じますか?
Story17 12月24日 前編
ブータンは新しい国!
Story18 12月24日 後編
ブータンの勇気。
Story19 番外編
亜門さん、GNH委員会の人と話しませんか?
Story20 12月25日
幸せの尺度。
Story18_en December 24th, 2015
【英語版】Courage of Bhutan
Story19_en Special feature
【英語版】Talk with the officer from GNH Commission
Story20_en December 25th, 2015
【英語版】Scale of Happiness

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